Procure to Pay(P2P:プロキュア・ツー・ペイ)
Procure to Payとは?
Procure to Pay(以下、P2P)は、企業が事業活動を行う上で必要なモノやサービスを購入するプロセスのことを言い、購買依頼や発注、受け入れ、支払およびそれらに関連する会計処理の一連の業務の流れを表す言葉です。Procurement to Pay や Procure to Payment と言う場合もあります。企業活動の基本のオペレーション業務としてO2C(Order to Cash)、R2R(Record to Report)とセットで語られることも少なくありません。広義においては取引先を選定するプロセスであるソーシングを含める場合もありますが、一般的にはS2C(Sourcing to Contract:取引先選定から契約まで)はP2Pの前工程として区分されます。
Procure to Payには、どんなステップが含まれるか?
P2Pには主に以下の6つのステップがあります。ほとんど企業は取引先への相見積もりを含む調達業務を行う部門と、買掛金の管理や支払いを行う部門が分かれており、複数の部門にわたるプロセスを包括的に管理できておらず、無駄なプロセスが発生しているケースも少なくありません。
・購買依頼
材料や部品、消耗品などを必要とする部門が購買部門へ購買依頼書を発行します。
材料や部品を新規に購入する場合は、仕様なども記載します。
・見積もり依頼
購買部門は、購買依頼書で指定された仕様の材料や部品の適切な仕入先を選定し、仕入先に見積もり書の提出を依頼します。同一の物品の追加発注の場合、見積もり依頼は省略されることもあります。
・発注
取引先に対して注文書を発行します。購入される物品やサービスの内容によっては、新規発注に先立ち、購買契約を交わす場合があります。
・受領
取引先から納入された物品を倉庫に受け入れ、数量や品質などの検査(受入検査)を行います。
・請求書の照合
取引先からの請求書の内容と、発注書や納品書の内容と照合し、相違がなければ買掛金を計上します(債務確定)。取引先との契約内容によっては、請求書の照合を省略し、受入検査をパスした時点で買掛金を計上する場合もあります。この場合、取引先が月締め等で複数の取引をまとめて請求書の内容(金額や日付など)を確認する場合と、予定している支払の内容を照合し、相違がないか確認するケースもあれば、請求書の発行を省略し、物品受領時の検収ベースで支払う場合とがあり、後者では購入側の企業が検収書(検収明細書)を発行し、取引先に送付します。
・買掛金管理
総勘定元帳と買掛金元帳(買掛金台帳)を作成して、買掛金の残高と支払状況を管理します。買掛金の処理に支払い漏れ等の誤りがあると、取引先に多大な迷惑をかける場合もあり、対外的な信頼を損ねます。また、企業の資金繰り管理にも影響を与えるため、適切に処理されているか定期的に確認する必要があります。
・支払処理
取引先との間で合意した支払条件(支払方法や期日)に基づき、支払処理を行います。
・支出分析
支出分析では、どの組織が、何を、どの取引先から、いつ、どれくらい購入しているかを、金額、数量、件数などで明らかにし、コスト削減の機会や業務改善のポイントを探ります。
FAQ(よくある質問)
P2Pには、どんな課題がありますか?
P2Pは複数の部門が関与する多くのプロセスがあり、個々の業務に伴う課題とP2P全体に関わる課題の両方があります。
個々の業務に共通の課題として、紙やメールなど手作業に依存した非効率性があります。また、どの業務も正しく実行するためには確かなデータの収集・処理、ポリシーやルールの整備、運用の徹底などが重要です。また、プロセス全体を効率的に運用するためには、部門間・プロセス間のデータ連携と共有が欠かせません。
また、こうした業務効率や業務の精度以外に、P2Pは社外への資金流出を伴うため、内部統制やセキュリティの整備は欠かせません。近年、ビジネスメール詐欺に代表されるように、企業の資金を不正に流出させるための手口は年々巧妙化しており、対策の強化が求められています。
Procure to Pay(P2P)は、なぜ重要なのですか?
調達業務が滞ると、生産や販売に必要な物品やサービスが必要な時に必要な量を入手することができなくなり、企業活動が停止する恐れがあります。また、調達価格の高低は企業の収益(コスト)やキャッシュフロー(支出)に直結します。調達時の個々の取引での交渉に加えて、購買支出の分析によって、コスト削減の機会を創出することも重要です。支払業務の遅延は対外的な信用を失い、場合によっては取引先の経営状況悪化を招く恐れがあります。また、支払業務は社外や社内からの不正支出のリスクにさらされており、適切なガバナンスの欠如は、キャッシュフローへの影響だけでなく、企業価値の棄損を招く可能性があります。