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日本企業でFP&Aを機能させるためには【後半】~2025年11月7日開催「Executive Round Table」レポート

Executive Round Table 開催レポート  

2025年11月7日、ブラックライン株式会社はCFOや経理財務の幹部職・リーダーの方々を対象としたラウンドテーブルを開催しました。本レポートではイベントの概要と各プログラムのサマリをご紹介します。

>> 【前半】はこちらから

パネルディスカッション

鷲巣氏の講演に続いて、キリンHD財務戦略部長の松尾氏にも登壇いただき、日本CFO協会/CHRO協会の日置氏をモデレーターに、鷲巣氏、松尾氏との3名によるパネルディスカッションが行われました。はじめに「キリンHDの取組みとQ&A」という形でディスカッションが始まりました。

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キリンHDの取組み

キリンと言えば「ビール」のイメージが強いですが、発酵・バイオテクノロジーの技術を軸に酒類・飲料事業に加え、医薬事業とヘルスサイエンス事業を展開しています。ビールは地産地消ビジネスなのに対し、医療とヘルスサイエンスはグローバルでモノが行き交うので、これまでのマルチナショナル型の経営からトランスナショナル型への移行で、いろいろ取組んでいるところです。

ポートフォリオづくりにおけるキリンHDの経理財務の役割とは?

ビールは地産地消なのでリージョン間のつながりがなく、システム(SAP)もリージョンごとに導入していましたが、今はトランスナショナル型への移行ということで、経営システムを一緒にして、経営が同じ言語で事業内容を見ることができるようにしようと、もがいているところです。

そうなるとFP&Aにおいても同じ数字を見て話ができるようになるわけですが、。そこに到達するにはまだまだ難しいところもたくさんあり、ポイントを絞って、優先順位をつけて取組んでいます。

共通言語作りを進める中でのビール事業とその他との違いは?

海外はトップダウンも含めて対話をして合点がいくと話が進むのが早いのですが、日本は厳しい。日本では事業の中にどうは入りこんでいくかが非常に重要です。

GLOBISの講師としてキリンHDのFP&Aの高度化をサポートしている鷲巣氏より

キリンHDのいいところとして、経理財務部門以外(事業部門等)からの出身者がFP&Aチームに混在していることがあります。事業を同じ言語で語れるか、競争優位性を同じ言語で語れるかが、信頼を形作るうえで出発点になります。信頼を醸成する上で、FP&Aの中に事業部門の人たちがいるというのは素晴らしいことです。

続いて、鷲巣氏の講演のテーマに沿った形でフリーディスカッションが展開されました。以下にコメントの一部を紹介します。 

日置氏:
外資は技術、SCMと、マーケティングといった各機能組織にファイナンスチームがいるのでFP&Aがつながりやすいが、日本企業は事業ラインの中に企画担当がいて、この企画担当同士がつながっていない。この状況で経理財務側からFP&Aをドライブさせるのは難しい。

鷲巣氏:
経理だろうと企画だろうと、対話があって意思決定のプロセスの質を上げられれば、どっちにBP機能を置いても構わない。ただFP&AはCFO組織なので、事業部門の企画と異なり、もし事業トップに嫌われても他の事業部門への流動性があるので存在できる。

松尾氏:
キリンは当初、経理の中に財務会計も管理会計もあったが、それだと事業部門に入り込めなかったので、BP機能を事業の企画部の中に設けた。そうすることで、事業計画を作る段階から我々が参画できるように働きかけている。

日置氏:
事業側と一緒に活動して、行動やアウトプットを示す必要があるが、そもそもその“場”がないと始まらない。経理だけでFP&Aのチームを作るとそこが難しい。

鷲巣氏:
P&Gの場合、自分が新卒で入社したときにすでにFP&Aが制度的に信頼されていた。日本企業の場合は、まずは「なかなか良いことを言うな」と事業側に思われるような人を作らないといけない。そういう人を増やし、繰り返すことで制度化されていくのではないか。

松尾氏:
経理だけだと財務諸表の解説に終始しがちで、ビジネスの話にならない。FP&Aは、ビジネスの話ができてなんぼの世界。

日置氏:
昔の松下電器の経理社員のことを考えると、本来、日本企業にもFP&Aのような部分があったのが、今は何となくやりにくくなっているのではないかという印象も受ける。

松尾氏:
分業し過ぎた部分があるのではないか。その中で何のオーナーシップを持つかが重要で、まずオーナーシップとしてビジネスをやるところに立てるかがカギだと思う。 

鷲巣氏:
ひとつひとつの成功事例を共有して、レバレッジをかけるかというのが一つのポイント。 その点、CFO組織の中にFP&Aがあるのはメリット。事業企画だと事業の中で閉じて、横展開が難しい。

テーブルディスカッション

パネルディスカッション後に行われたテーブルディスカッションでは「FP&Aを推進する上での『人』以外の課題」をテーマに、6つのグループに分かれ参加者同士で活発な議論が交わされました。後半では各グループの発表とそれに対するパネリストのコメントがありましたので、以下に発表された内容(課題)に対するパネリストのコメントの一部を紹介します。 

1. FP&Aとしてどういう形がいいのか試行錯誤している

はじめは管理会計から入ってもいいと思う。ただし、FP&AはAnalysis&Action。行動することが重要。(松尾氏) 

2. FP&AをCFO組織に置くか、事業部門に置くか悩ましい・事業部門の中にいた方が信頼を得やすいが、全社的な大胆な改革が難しい

答えではないが、信頼されるために最初の90日で何か成果を出すことが大事。小さいことで成果を出すだけで、議論の質が変わる。それを積み重ねることを自分はやってきた。(鷲巣氏)

3. FP&Aの役割として何をやっていくか

日本企業は何でもやろうとする。例えば、新しいものを生み出すところだけFP&A的な動きをして、それ以外の部分は従来の管理会計的な動きでいいのはないか。(日置氏) 

お困りごとを解決する、くらいのところから入るでもいいと思う。そこからビジネスの話につながると声をかけてもらえるようになる。健全な危機感が醸成されている事業部門からは、経理人材を出してくれと言われる。そこに出て行った人は苦労するが、信頼の貯金は積まれていく。(松尾氏)。 

4. 経理人材が事業の中で役に立つかをどのようにアピールするべきか

例えば会計の知識を用いて営業と同行して、商談をサポートするというところからスタートするのも一例。顧客は仕入れコストを見がちだが、そこに回転率の議論を差し込むことで商談が好転するという経験が私にあるが、これも会計視点があるからこその貢献だと思う。一方ゼロベースで考えてみると、FP&Aは経理出身ではなく事業企画出身でもいいかもしれないと思うこともある。AIの進化で会計プロセスに知見がなくても事業を知っている方が即戦力になりやすいかもしれない。(鷲巣氏)

5. (FP&A組織に)事業部門から人材を招くのか、経理から送り込むのか

一例だが、(事業の中で経理が貢献できることという観点で)プライシングに経理が役に立てるポイントがあると思う。海外で先行してRevenue Growth Management(収益成長管理(※))を実行しているので、その知見を日本に展開しています。(松尾氏)

6. 「組織構造と配置」「データ・システム」「経営との関係性(FP&Aへの理解・認知など)」「人材育成」の4つの課題がある

FP&Aのコストに関する課題で言えば、最近のファイナンス組織のトレンドはCoE(Center of Excellent)、SSC、FP&Aの3ピラー構成。SSC(シェアードサービスセンター)でコストを浮かしてFP&Aにリソースシフトさせる方法がある。データ・システムに関しては、誰が見ても同じデータ/情報であること(Single of Truth)が重要。FP&Aのベストプラクティスはマイクロソフト社だと思うが、彼らはそこに非常に注力している。データ統合は容易ではないが、今はいろんなソリューションがある。(鷲巣氏)

※ Revenue Growth Management(収益管理):価格・商品構成・販促などを最適化し、収益成長を持続的に最大化するための経営管理手法。

テーブルディスカッション.png


この後、懇親会が行われ、美味しい料理と少しのお酒を手に参加者同士の会話も弾み、今回のラウンドテーブルも無事、盛況に終えることができました。 

ブラックラインは今後もCFO組織の高度化と人材価値の最大化をご支援するために、ソリューションを提供するだけでなく、お客様同士をお繋ぎし、課題やナレッジを共有し、解決策のヒントを得られるような場を企画して参ります。 

参加頂いた皆様、ありがとうございました。また、当日の円滑な運営をサポートしていただいたホテルのスタッフのみなさま、ありがとうございました。 

<レポーター>

yakata.jpgブラックライン株式会社
ファイナンシャルエキスパート
屋形 俊哉

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