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日本企業でFP&Aを機能させるためには【前半】~2025年11月7日開催「Executive Round Table」レポート

Executive Round Table 開催レポート  

2025年11月7日、ブラックライン株式会社はCFOや経理財務の幹部職・リーダーの方々を対象としたラウンドテーブルを開催しました。本レポートではイベントの概要と各プログラムのサマリをご紹介します。 

イベント概要 

今回で8回目となるエグゼクティブラウンドテーブルは、前回(※)に続いてFP&A(Financial Planning & Analysis)をテーマに開催されました。前回はFP&Aの実践例が中心でしたが、今回は日本企業においてFP&Aを機能させるためのポイントに重点を置いた内容で、講演やディスカッションが展開されました。

<アジェンダ> 

  • 開会のあいさつ:ブラックライン株式会社 代表取締役社長 宮﨑盛光
  • ゲスト講演:テーマ「CFOが直面するFP&Aの壁とその乗り越え方」
  • グロービス経営大学院教員/FP&A エバンジェリスト 鷲巣大輔 氏
  • パネルディスカッション
     モデレーター:
       一般社団法人日本CFO協会/一般社団法人日本CHRO協会/一般社団法人日本CLO協会 シニア・エグゼクティブ 日置圭介 氏
     パネリスト:
       グロービス経営大学院教員/FP&A エバンジェリスト 鷲巣大輔 氏
       キリンホールディングス株式会社 財務戦略部長 松尾英史 氏
  • テーブルディスカッション&発表
  • 懇親会(ネットワーキング)

AIの戦略的な活用/FP&Aの実践と人材~2025年6月4日開催「Executive Round Table」レポート

ゲスト講演:CFO が直面する FP&A の壁とその乗り越え方

スピーカーの鷲巣氏は、P&G日本法人のコーポレートファイナンス部門からFP&Aキャリアをスタートし、その後、スタートアップ企業CFO、欧米企業日本法人・アジア法人CFO、PEファンド傘下企業の経営企画、FP&Aヘッドを歴任するなど、一貫してFP&Aの現場に携わってきました。2024年に株式会社FP&Aラボを設立し、日本企業のFP&A機能高度化に向けて活動を行い、また、2007年からはグロービス経営大学院の教員として「ファイナンス・ビジネスパートナー」の育成にも尽力しています。 

鷲巣氏は今年8月に開催した弊社の年次イベント「BeyondTheBlack Tokyo 2025」にも登壇され(※)、FP&Aの本質や役割、機能化させる方法等について、熱く、わかりやすく語っていただきました。本イベントでは特に、CFOをはじめとしたCFO組織のリーダーの方々(CFO組織における意思決定者、実行責任者)向けに、ポイントを絞った話をしていただきました。

鷲巣さん講演1.jpg

FP&Aは意思決定のプロセスそのものを磨く存在

FP&Aの役割は、意思決定を下す経営トップにとって頼れるビジネスパートナー(以下、BP)です。では、意思決定者をサポートするとは、どういうことでしょう。たびたび「意思決定を支援する」という言葉を目にしますが、これでは当事者感がありません。かといってBPは意思決定の当事者ではありません。鷲巣氏はこう言います。 

「FP&A(BP)は意思決定のプロセスそのものを磨く存在である」――意志決定のプロセスそのものを磨くことで、意思決定の質を高める。単にデータを提供するだけでなく、ステークホルダー間の対話を設計し、洞察と仮説で意思決定を活性化させ、経営を動かす。これがFP&Aのミッションであると、鷲巣氏は語ります。 

FP&A組織機能化の「壁」とは何か

日本でもFP&Aを導入する企業が増えていますが、下図のような声をよくお聞きします。

 「FP&A組織をつくったが、実際に機能していない」 

 「何を提供すれば経営が動くのか、分からない」 

 「経理出身者が多く、事業部門に入り込めていない」 

 「本社と事業部門とでデータやKPIがバラバラ」 

 「本社と事業部門との間に対立構造がある」 

こうした声は、それぞれ独立した問題ではなく実は連鎖しています。そして中でもクリティカルなのが、最後に挙げた「本社と事業部門が対立構造になっている」ことです。事業部門と本社の間で透明性の高いデータが共有されず、稟議が「勝つか負けるか」になってしまっていないでしょうか。 

こうした問題を整理すると下図のように4つの問題に分類されます。

意思決定プロセスの問題点.png

これらが日本企業における「FP&A機能化の壁」です。

したがって、解決策はそれぞれの問題の裏返しであり、図の下段に示したことを実行すればよいのです。 

とはいえ、「言うは易し、行うは難し」。では、いったいどこから着手すべきでしょうか。それを考えるヒントとして、学術的な観点から参考になる研究論文を2つご紹介します。

学術研究から見る機能化のカギ

1つ目が、「経営における管理会計の有効性を高める要因は何か」というテーマで、ドイツ企業を対象に研究した論文です。結論を言うと「FP&Aの有効性(Controllership Effectiveness)を高める鍵は、“Business Partner Role”の形成にある」。簡単に言えば、システムを入れてデータを整備したところで(有形Business Analytics(BA)資源)、それを使いこなすような人材がいないと意味がないということです。そして、データドリブンの文化や経営からの支援(無形BA資源)があれば、その効果は一層高まるということです。 

参考①.png

では、“Business Partner Role”はどうやって形成されるのでしょうか。

それがもうひとつの研究論文「スコアキーパーからコントローラーに変容する要件」です。

これもドイツ企業を対象にした研究です。結論から言うと「スコアキーパーから“Business Partner”への役割拡張は、自然発生的ではなく、“制度的働きかけ“によってはじめて可能となる」ということです。

参考②.png

いずれの論文も興味深い内容で、ドイツ企業では制度整備がBP形成を促す(制度ドリブン)ということでしたが、果たして日本企業にも同じことがいえるのでしょうか。 

日本企業におけるFP&A機能化のカギは「信頼」

そこで国内約40社を対象とするサーベイ(重回帰分析)と公共交通/製薬/素材メーカーなど多様な事例のインタビューを実施したところ、得られた結論が「日本企業では“制度が人を動かす”のではなく、“人が制度を動かす”――信頼を起点とする“人ドリブン型”FP&A」であるということでした。 

参考③.png

少し乱暴な言い方をすると、システムが整ってなくても、信頼されているFP&Aさえいれば、意思決定のプロセスの質を上げることができる、と鷲巣氏は言います。逆に言うと、信頼されるFP&Aがいないと、どれだけ制度や仕組みが整っていても、意思決定のプロセスに影響を与えられないということです。

日本.png

したがって、極めて属人的な信頼というのが日本企業におけるFP&Aが機能するための必須条件ということになります。とはいえ、そのような優秀な人を多く育てるのは容易でありません。企業全体の経営の意思決定に影響を与えるためには、この属人的信頼をいかに制度化するか(≒組織的信頼にするか)、これが日本企業の成熟課題なのです。

この後のパネルディスカッションに登壇いただくキリンホールディングス(以下、キリンHD)では、今、まさにこの課題に取組んでいます。キリンHDは、GLOBISとともにFP&Aの高度化にチャレンジされており(下図参照)、トレーニングで個人の力量に焦点を当て、まずは属人的な信頼を作るところからスタートしています。そして、それをいかに組織的信頼・制度的信頼へと昇華させていくかが、次のテーマです。

キリンHD.png

まとめ

出発点は「信頼」です。その信頼を軸に制度化していく。小さく始めて、早い段階で成果を出して、そこで信頼を得る“形”を作っておいて広く展開する。そして、これを意図的に文化にする、制度化する。こうした属人的な信頼からスタートし、それを起爆剤として制度に進化させていくことが、FP&A機能化に必要なのです。

出発点.png

BeyondTheBlack TOKYO 2025(鷲巣氏登壇) イベントレポート 

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<レポーター>

yakata.jpgブラックライン株式会社
ファイナンシャルエキスパート
屋形 俊哉

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