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日本の経理部は「経路依存性」に陥ってないか?早稲田大学 入山教授による特別講演から考える【前半】|ブログ

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「BeyondTheBlack TOKYO 2021」レポート

日本におけるイノベーション創出の遅れが指摘されて久しい。その根源的な理由はどこにあるのか。当講演では前半と後半に分け、前半ではイノベーション創出を阻害している日本型経営の課題、ブレイクスルーとなる考え方について、早稲田大学ビジネスクール教授・入山章栄氏に経営学の視点から解説する。

DXの前にCX(コーポレートトランスフォーメーション)の取り組みが必須

DrIriyama.jpgのサムネイル画像アフターコロナの時代、ビジネスはどう変わっていくのか――誰もが気になる点だが、入山氏は意外にも「世界標準の経営理論を軸に考えるなら、会社が進むべき方向はほぼ変わらないでしょう」と語る。コロナ禍前から不確実性が高く、正解が見えない状況は継続。デジタル化を始めとする変革の波により、多くの業種業界で既存のビジネスモデルは変容、あるいは“破壊”を迫られている。そして変化に対応し新たな進化を遂げられない企業は存続さえ危うい点も変わらない。

こうした時代にあって生き残っていくには、企業組織自体が変革を起こし、イノベーション創出に取り組むことが肝要だが、日本企業の多くが苦戦している。その要因を考える上でキーワードとなるのが、経営学でいう「経路依存性」だと入山氏は言う。

「企業には様々なルール、システムが存在しており、それら要素がパズルのようにうまくかみ合うことで組織全体が機能しています。逆を言えば、様々な要素の内の1ピースだけを時代に合わせて変えようとしても、他の要素とがんじがらめにかみ合っているゆえ、うまくいきません」と入山氏。それが「経路依存性」の正体だという。

例えば、旧来の日本型経営を構成してきた要素に新卒一括採用、終身雇用をベースとするメンバーシップ型雇用、そこに紐づく同質な評価制度およびワークスタイルがある。それらの要素をすべて変えずして、喫緊の課題となっているダイバーシティのみ“女性活躍推進”などの個別の施策で取り組みを進めようとしてもうまくいくわけがないと断言。他の要素が“多様性”の実現に反しているものだからだ。

イノベーション創出に欠かせない「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が失敗しがちなのも、デジタル導入のみを進めようとすることが要因だという。「DXの前にCX(コーポレートトランスフォーメーション)が必要と言われるように、組織全体の変革が大前提となります」と指摘する。

コロナ禍が日本企業にもたらす変革のビッグチャンス

イノベーション創出の前提となる組織変革でも遅れを取る日本企業だが、実はコロナ禍が「変わる」ためのビッグチャンスをもたらしているという。コロナ禍で変化の方向性は変わらないものの、そのスピードは加速化している。

日本でもリモートワークを始めとするいわば“強制的”な働き方改革が推進され、評価制度も時間ベースから成果ベースへとシフトしつつある。成果を評価するには雇用体制もジョブ型に移行せざるをえない。「今こそ、日本企業を進化から蝕んでいた“経路依存性”から脱却する好機であり、変わるための最後のチャンスともいえます」(入山氏)。

イノベーションに欠かせない「両利きの経営」推進の条件

では、イノベーションを生み出す組織に変わるにはどうしたらいいのか。ここでポイントとなるのが、入山氏が挙げる2つ目の経営学のキーワード「両利きの経営(Ambidexterity)」だ。

「イノベーションとは“既存知と既存知”の新たな組み合わせから生まれます」と入山氏。“イノベーションの父”と言われる経営学者・シュンペターが80年以上も前に、「新結合(new combination)」という言葉で提唱しているものだ。

だが、人間には認知の限界があり「日本企業の多くは同質性が高い組織の中で、目前の知と知を組み合わせ、その深堀りに終始してきました」と入山氏。こうしたやり方では、斬新なイノベーションは決して生まれないと指摘する。

そうではなく、今いる場所にない遠くにある知に多く触れ、持ち帰り、既存知との新たな組み合わせを摸索する。その上で、これと思った組み合わせを徹底して深堀りし、磨き上げ収益化をはかる。つまり前者の「知の探索(Exploration)」と後者の「知の深化(Exploitation)」を高いレベルでバランスよく実践していく。これが入山氏が言うところの「両利きの経営」で、イノベーションには欠かせない概念だという。

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人間にしかできない経理の仕事とは?早稲田大学 入山教授による特別講演から考える【後半】 に続く

<スピーカー>
早稲田大学大学院経営管理研究科
早稲田大学ビジネススクール
教授 入山 章栄 氏