旭化成によるBlackLineを活用した会計業務改革~決算期の働き方を変えた、効率化・集中化の実現と軌跡~
※本ブログは2024年12月17日(火)にオンラインで開催された旭化成様の事例セミナーの内容をレポートします。
旭化成様では、2023年4月のSAP S/4 HANAへの移行に向けて自社独自のシステムを廃止し、会計業務プロセスの見直し及びシステムの変更を行ってきました。その過程で、コロナ禍で急務となった「リモート決算」に対応するため、BlackLineタスク管理ソリューションを導入し、その後、さらに勘定照合や差異分析といった各種ソリューションを活用し、「オペレーション効率化」「標準化・品質向上」に取組まれています。
アジェンダ
導入の背景~制度会計業務改革~
旭化成は「マテリアル」「住宅」「ヘルスケア」の3つの領域で事業を展開し、2023年度末の売上高が27,849億円、従業員数49,295名を有する日本でも有数の総合化学メーカーです。
下図にあるように、経理・財務部では2018年頃からBPO拡大や経費精算システムの導入などの経理オペレーション改革を進めていましたが、2020年にコロナ禍の影響でリモート決算を可能とする体制づくりが急務となり、BlackLineのタスク管理が導入され、それを皮切りに制度会計における業務改革がスタートしました。
これまでの取組では、BPOやクラウドサービスを活用することで、各部署で職人技によって属人的に行われていた業務の標準化や集中化を図ってきましたが、今後はシステムによる自動化の領域を大幅に拡大し、人がより高度な業務に従事する体制づくりを目指して、改革の次のステップに取組んでいます。
BlackLine活用状況
旭化成様ではBlackLineの「タスク管理」「差異分析」「勘定照合」の3つのモジュールを導入しており、それぞれのモジュールの導入のメリットや適用業務のイメージなどが紹介されました。
1)タスク管理
「タスク管理」の導入によって決算作業と進捗管理が一体化され、リーダーや管理者は各メンバーが担当するタスクの進捗を一覧で確認できるようになり、進捗管理をモレなく、効率的に実施できるようになりました。同様に、担当者も前工程のタスクの状況等を把握しながら作業ができるようになりました。
また、下図のようなタスクの詳細な状況確認に加えて、ダッシュボードを活用することで、タスクの完了状況や期日超過状況など、業務全体をリアルタイムに可視化することも可能になりました。
さらに、タスク管理ではタスクの実行や承認に必要な作業手順や関連文書などがタスクに紐づいて管理されるため、今回決算を円滑に実施するだけでなく、過去情報の確認や引継ぎに必要な情報も含めてBlackLine上で一元管理できるようになりました。
2)差異分析
「差異分析」は、事前設定した粒度・しきい値をもとに、自動的に勘定残高の増減比較を行う機能で、旭化成では決算での勘定残高の増減分析業務に活用しています。 勘定残高の増減分析業務にてBlackLineを活用する際のポイントは大きく2つあります。
- 事前設定した粒度やしきい値によって分析対象が自動で検出されること
- 分析した結果やコメントなどの定性情報もあわせて保管されること
これによって下図にまとめたように、担当者のスキルに依存しない安定した品質での分析が可能となり、分析業務自体も大幅に効率化できました。
3)勘定照合
「勘定照合」機能は、BLに登録した残高データに対して、一定のルールやしきい値を設定し、それらに該当するデータを抽出・自動判定する機能で、旭化成では主に以下の3つの業務に活用しています。
①異常値チェック
逆残(貸借が逆に計上されている資産や負債)、外貨誤り(外貨残あり且つ邦貨残ゼロ、外貨残ゼロ且つ邦貨残あり)、長期滞留(3か月超残高の増減なし)などを異常値として定義し、該当する勘定残高を自動抽出します。対象残高の内容を確認し、残高内容や整理タイミングなどのコメントを併せて記録。BlackLineによる異常値チェックによって、業務の標準化・集中化が進み、業務の月次化や品質向上、工数削減を実現することができました。
②ゼロ残高チェック
相殺処理や振替処理によって決算時に残高がゼロ円になるべき勘定科目の残高がゼロになっていることを自動でチェックします。システム化したことでチェック対象の網羅性が担保されると同時に、自動承認機能を活用することでチェック工数が削減されました。
③期待値チェック・補助簿管理
期待値チェックでは決算時に想定される残高となっていることをチェックします。補助簿管理ではBlackLine上で補助簿管理を行い、決算時に総勘定元帳の残高と一致していることをチェックします。こちらもゼロ残高チェックと同様、網羅性の担保と工数削減を実現することができました。
4)監査対応への活用
旭化成では監査人にもBlackLineへのアクセス権限を監査人に付与しています。「タスク管理」では決算の関連資料や業務履歴、承認履歴などが一元管理され、「差異分析」では増減分析のデータや分析コメントが保管されており、こうした情報を監査人と共有しています。
従来はこれらの監査に必要な情報を担当者が事前に準備していましたが、BlackLineを活用してからはこのような「監査のための作業」が不要になり、ペーパーレス化によって担当者だけでなく監査人にとっても監査を効率的に進めることが可能となりました。
グループ会社展開
現在、旭化成では持株会社に導入されたBlackLineを国内事業会社5社に展開中ですが、導入にあたり納得感を持って同じベクトルを向いて取組んでもらうために、以下の3つのポイントに留意して進めています。
- 課題感の共有と導入メリット整理
- 費用対効果説明
- 先行事例をベースとしたクイックな導入
1)課題感の共有と導入メリット整理
BlackLine導入に前向きに取り組んでもらうために、各社共通の「困りごと・実現したいこと」を抽出し、その上で「BlackLineによって実現できること」を整理しました。下表はその一例になります。
2)費用対効果説明
費用対効果の説明では、現状との比較だけではなく、As-Isの体制のままで決算品質向上を実現する場合に必要なコストとBlackLineを導入した場合に発生するコストを比較することで、納得感を持ってもらうことに努めました。
3)先行事例をベースとしたクイックな導入
システム導入の現場の負荷に対する懸念を払拭するためにシステム要件や運用ルールはグループ共通とし、各社には先行事例をベースとして追加・変更・削除の検討をお願いすることで、タスク管理であれば約2~3ヶ月でのクイックな導入を実現することができました。
今後の展望
2024年10月時点で国内事業会社5社へのタスク管理の導入が完了し、今後、2025年度にかけて差異分析と勘定照合の導入を進める予定です。
その際に重要なポイントが「ノウハウ整理による自走化」です。BlackLine導入時のノウハウを今一度整理し、グループ会社にも移植することで、システム導入後の改善活動を各社自身で自走して進められようになるよう取組んでいきたいと考えています。
レポートは以上です。松井様、貴社におけるBlackLineの活用状況やグループ展開の取組みについて、具体的な画面などを用いてわかりやく説明していただき、ありがとうございました。