楽天グループのDXを牽引する経理実務担当者に聞く!業務標準化を成功させる組織作りの秘訣とは?
「BeyondTheBlack TOKYO 2022」レポート#6
楽天グループは、2019年より本格的に経理業務の標準化・効率化に取り組み、2020年にBlackLineを導入。以降、業務プロセスの改善を着実に進め、現在ではBlackLineの活用範囲をグループ22社までに拡げています。本講演では、BlackLineの導入と定着を現場で牽引する楽天グループ株式会社 財務経理ディビジョン コーポレート経理部の東郷氏に、「経理DXを進める組織文化の醸成や関係者を巻き込むコツ」についてBlackLineインプリメンテーションコンサルタントの小笠原が対談形式でお話をお伺いしました。
楽天グループ株式会社 財務経理ディビジョン コーポレート経理部 東郷 直子氏
【アジェンダ】
- BlackLine導入の経緯
- タスク管理の導入効果を感じるのはどんな場面か
- 短期間でグループ22社にBlackLineを展開できた3つの秘訣
- 今後、さらに運用を工夫したいポイント
- BlackLine導入前の自分と導入後の自分にアドバイスするとしたら
BlackLine導入の経緯
楽天グループは2020年のERPリプレイスを契機に、BlackLineを段階的に導入。ERPの刷新に際し、既存の業務プロセスの整理と再構築のために、まずはBlackLineのタスク管理モジュールを導入した。この時期、新型コロナの感染拡大とも重なっていたこともあり、急なリモートワークの実施やその後の定着化にも大きく貢献している。
楽天グループは様々な事業を展開しており、本社に加えて各事業にも経理部門を配置している。BlackLineの導入以前は経理の各部門がそれぞれにExcelや汎用のタスク管理ツールを利用していたため、伝票や証憑の保存場所が部門や担当者によって異なり、必要な資料に容易にはたどりつけない状況にあった。承認フローは紙の伝票に押印で、業務マニュアルはバージョンもフォーマットもばらばらで更新は滞り、保管場所もばらばらだったと言う。
「これらの経理の現場にありがちな悩みの全てに応えてくれたのが、BlackLineのタスク管理機能でした。」
タスク管理の導入効果を感じるのはどんな場面か
導入初期に感じた一番の効果として、BlackLineで業務フローが電子化されていたおかげで、急なリモートワーク対応を円滑に実施できたことを上げた。
そして、導入後2年が経過した今、感じる効果としては以下の2点。
- 多様な働き方の実現
楽天ではコロナ禍以前から働き方改革に取り組んできたが、それを推進する上でもBlackLineは効果的なツールだと実感。 - ローテーションや異動時の業務の引継ぎや異動先での業務の遂行が容易に
経理のどの部門に異動してもプロセスが標準化されているため、業務マニュアルや前任者の業務履歴などが一元管理されており、経理の現場は非常に助かっている。
短期間でグループ22社にBlackLineを展開できた3つの秘訣
続いて、楽天グループが短期間でグループ展開に成功した要因として3つのポイントがあげられた。
- タスク管理を導入する手順をパッケージ化
経理の各部門にてタスク管理を導入する際の手順書を整備。導入側は何をいつまでにどうやればよいかが明確になり、導入支援側は部署名や会社名を変えるだけで、すぐに他の事業や会社での導入マニュアルとして利用可能とすることで、導入にかかる工数(コスト・時間)を最小限に抑えることができた。 - アフターケアを重視
ユーザー向けにスキルアップトレーニングを定期的に開催し、新システムでの業務の定着に努めた。 - 自分たちのシステムという意識
内部統制チームとも相談の上で、自分でBlackLineのタスク変更などができるように権限を付与。従来の会計システムやERP会計のようにIT部門に変更依頼をしなくても、自ら改善できる”自分たちのシステム”という意識が持てたことも大きい。
今後、さらに運用を工夫したいポイント
現在、東郷氏は経理の業務プロセス全般についての見える化、標準化、自動化に取組んでおり、タスク管理モジュールによる“見える化”の成果をこの取組みに活かす3つのアイディアが紹介された。
- RPA導入時のプロセス検討でシステム間のつながりや業務手順を整理する際、BlackLineのタスク一覧を活用
- RPA化に成功した業務を類似業務に横展開する際、タスク一覧を活用
- 業務ログなどのレポート機能を業務分析に活用する
BlackLine導入前と自分と導入後の自分にアドバイスするとしたら
本セッション最後のこのユニークな質問に対し、導入前の自分には具体的かつ実務的なアドバイスが示された。
「タスクの自由項目の入力ルールを早い段階で整理しておけばよかったと思います。」
各部門での業務を洗い出した後に体系的に整理する際、部門間で粒度やレベルがそろっていなくて苦労したが、プロジェクトの途中でタスク入力のガイドラインを設けた後は質の高いアウトプットが各部門から出るようになった、というプロジェクト経験者ならではの反省の言葉ともいえる。
一方、導入後の自分に対してはアドバイスではなく、ユーザートレーニングなどのアフターケアをしっかりやったことを褒めてやりたいと言う。
「アフターケアをしっかりやったおかげで、新システムの導入当初にありがちなネガティブな声が解消され、ポジティブな方向に風向きが変わりました。」
実務者目線での工夫のポイントやDX定着のポイントが、BlackLine導入プロジェクトの様々な場面での具体的な話として紹介された20分。東郷様、ありがとうございました。
<スピーカー>
楽天グループ株式会社
財務経理ディビジョンコーポレート経理部
東郷 直子 氏
ブラックライン株式会社
インプリメンテーションコンサルタント
小笠原 太甫