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DX先進企業が語るパーパスの経営とデジタル変革

「BeyondTheBlack TOKYO 2021」レポート

富士通 福田氏、トラスコ中山 数見氏が語る:DXに向けた「2階建て」のデジタル変革とはブラックラインが2021年8月18日-19日の2日間に渡ってオンラインで開催した『BeyondTheBlackTOKYO2021』のDay1では、「DX先進企業が語る:データに基づく意思決定こそが経営を変える」と題してのパネルディスカッションが行なわれた。富士通株式会社執行役員常務CIO兼CDXO補佐の福田 譲氏、トラスコ中山株式会社 取締役 経営管理本部長兼デジタル戦略本部長数見 篤氏、ブラックライン株式会社 代表取締役 宮﨑 盛光が経理部門やマネジメント部門からのデジタル変革の推進の状況と今後の可能性について語った。

pic1.png(左より)モデレータ:株式会社ダイヤモンド社『週刊ダイヤモンド』前編集長 深澤 献氏、
パネリスト:トラスコ中山株式会社 取締役 経営管理本部長兼デジタル戦略本部長 数見 篤氏、
富士通株式会社 執行役員常務 CIO兼CDXO補佐 福田 譲氏、
ブラックライン株式会社 代表取締役社長 宮﨑 盛光

トラスコ中山の数見氏は営業部門を担当の後、3年前に情報システム部長に着任。2020年10月からデジタル戦略本部と経営管理本部長を兼任しデジタル変革を推進している。富士通の福田氏は、CIO兼CDXOとして富士通の変革プロジェクトを推進している。ブラックライン 代表の宮﨑は、世界標準の会計・経理のクラウドソリューションを提供する立場として、モダンアカウンティングを提唱し、日本企業の決算業務のリモート化と会計のデジタル変革を推進している。

ディスカッションは、この3名にモデレータのダイヤモンド社 深澤 献氏が質問する形で行なわれ、1)日本の大企業のデジタル変革の現状と課題、2)DXを推進するために、個人と会社のパーパスをどう結びつけるか、3)デジタル変革の鍵となるデータ活用といったテーマが語られた。

2階建てによるデジタル変革

はじめに数見氏、福田氏の両氏が、トラスコ中山、富士通のデジタル変革の内容を紹介した。

トラスコ中山では、2017年から基幹システム刷新をスタートさせ、2年半ほどかけて2020年1月にリリース。「がんばれ‼日本のモノづくり」という企業メッセージを掲げ、日本の製造業や建設現場などモノづくりの現場で使われる工具など、あらゆる間接材を「最速」「最短」「最良」で届けることを徹底的に目指し、そのコア部分にデジタルを使うことで圧倒的なサービスに変えていくことを重点としている。その取り組みの先進性は高く評価され、令和2年には経済産業省と東京証券取引所が選定する「DX銘柄2020」「DXグランプリ2020」に選ばれている。

富士通は現在、全社DXプロジェクトの推進中。時田社長の補佐的な役割として2020年4月にSAPジャパンから移籍し、強力なリーダーシップのもと、部門・グループ・リージョン横断で富士通グループの変革に取り組んでいるのが福田氏。「社内のITシステムをどうするかという話ではなく、ビジネスモデルをどうするか、お客様との付き合い方や、そこに存在する業務をどうするか、全体的にフルモデルチェンジが必要と考え、取り組んでいる」と語る。

福田氏は、企業のデジタル変革を「2階建て」で捉えていると語る。「企業のITや経営を家にたとえると、富士通はいま1階をリニューアル中。業務の標準性や効率性を高め、ITを出来る限りシンプルにしていく」(福田氏)

1階は、標準性が高くて共通化が望ましいERPの領域。一方2階は、顧客戦略やサプライチェーン戦略など、競合とどう差別化するのかという場所であり、それぞれは目的や手段、大事にすべきことが違うという。

続いて、管理部門のデジタル変革については、ブラックラインの宮﨑から状況の報告がなされた。ブラックラインと日本CFO協会が、日本企業590社の経理財務を対象におこなったアンケートによると「リモートワークが進んでいる」との回答は54%。その内容は、紙の電子化や押印作業の代替に留まっているという状況が報告。「日本の経理部門の現状は、DXの『D』は一部できたが、『X』(トランスフォーメーション)に至っていない」と、宮﨑は語った。

パーパスと個人の仕事を結びつける

数見氏は経営管理本部に着任以来、多くの経理部門の社員と面談をおこなった。現場からは自分たちの仕事を変えたいという声が多く、「デジタルを使い、自分たちの仕事をトランスフォーメーションし、価値を見出してきたい」といった意見が寄せられ、意を強くしたという。

「社員一人一人がお客様にその価値を自分の腹落ちした言葉で伝えること」が重要だと数見氏はいう。そのための実践が経理部門の社員との対話であり意見のヒアリングであり、さらに現場にパーパスを浸透させていくためのコミュニケーション活動だ。

そのために、経理社員からの言葉を聞いて、経営管理本部のテーマとして「フロントライトを照らせ!」という言葉を掲げた。「現場の一人ひとりが腹落ちするために、一定の時間をかけて浸透させる」と数見氏。会社と個人のパーパスをつなげるための地道な努力を続けているのだという。

富士通も同様に、DXを進めるための「パーパスのチカラ」に注目していると語る。社員13万人に「富士通で成し遂げたいことは何ですか?」という問いを投げかける対話型の組織マネジメントプログラム「パーパス・カービング」を展開中だ。

「自分自身のパーパスを自覚すると、日々の仕事の景色も変わり、スイッチが入る。未来に向けたあるべきやり方を自然に考え始める」と福田氏。自身としても長年グローバル企業で仕事をしてきた経験から「日本を、世界をもっと元気にする」というパーパスを持っているという。

宮﨑もまた、ブラックライン社長に就任後に最初に実行したことがパーパスづくりだった。マネジメントスタッフを集めて、個別に全員インタビューをして、それを会社のゴールにつなげていく作業をおこなった。その結果、日本の経理財務が「経営の羅針盤」たる世界を作るという言葉を据えた。

「先行きが見えにくい時代を、簿記が生まれた500年前の大航海時代になぞらえて、ビジネスの世界で経理財務の一人ひとりが羅針盤になる」(宮﨑)

データ活用がデジタル変革の鍵となる

最後に、デジタル変革を考える時、こうしたパーパスの浸透と同時に、テクノロジーの実践としては何が重要になるかが語られた。

数見氏は、経理部門は「バックオフィスではない自覚」を持ち、IT部門とともにDXを引っ張る存在という意識を持つことを強調する。そして「データとAI」がモノづくりの現場を変えていくという将来イメージを持つという。

現在、現在の調達には、検索、見積り、納期確認、発注という作業が昔から当たり前にあるがこうした作業は、データとAI、デジタルを活用することによって大幅に減る。「最適な製品が必要な時に自動的にお客様の手元に届く世界が実現する」という。

富士通の場合、時田社長のリードする「One Fujitsu」というイニシアチブがその実践にあたる。富士通グループ・グローバルで一つの業務ルール、一つの組織、一つのIT、一つのデータの定義で軸を通し、マーケティング、顧客への提案活動やサービスの提供など主要な業務を、地球上で一つに揃えようという大きなプロジェクトだ。「4兆円規模の日本企業で、このようなレベルのグローバルプロジェクトを実施している例は非常に限られており、大きなチャレンジ。簡単なことではなく、悩みながら進めている」と福田氏は言う。

経理部門のデジタル変革は、単に現場業務の機械化や事務作業のデジタル化にはとどまらない。デジタル変革に必要な、コミュニケーション、個人と会社のパーパスのつながり、そして実践テーマとしてのデータ活用など、パネリストから出されたテーマは、DXの意義を掘り下げる内容となった。

<スピーカー>
トラスコ中山株式会社
取締役 経営管理本部長兼デジタル戦略本部長 数見 篤 氏

富士通株式会社
執行役員常務 CIO兼CDXO補佐 福田 譲 氏

株式会社ダイヤモンド社
『週刊ダイヤモンド』前編集長 深澤 献 氏

ブラックライン株式会社
代表取締役社長 宮﨑 盛光

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