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森永製菓が挑む『資本コストを意識した経営』と『グローバルガバナンス強化に向けた変革』

「BeyondTheBlack TOKYO 2023」レポート

2023年8月23日・24日の二日間にわたり、ブラックライン株式会社主催による「BeyondTheBlack TOKYO 2023」を開催いたしました。今回のテーマは「ファイナンス×人的資本経営」で、非常に多くのお客様にご参加いただきました。本ブログでは、その一部をレポートさせていただきます。

「2030年にウェルネスカンパニーへ生まれ変わる」との経営計画に沿ってグローバルでの経営基盤の強化や人材の育成・活用に着手されている森永製菓。 PBR改善要求、非財務情報の開示、グローバルガバナンス強化への対応など多くの企業が直面する共通課題に対して、どのように対応しているのでしょうか。同社の財務経理における組織と業務の変革について、同社のCFOの髙木様にブラックラインの宮﨑社長が伺いました。

120年企業として「PBR改善要求」にどう応えるか

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ブラックライン 宮﨑社長(以下 宮﨑):森永製菓様は「おいしく、たのしく、すこやかに」というメッセージを掲げられています。個人的なことですが、我が家には小さな子供がいましてハイチュウがすごく好きなんです。そんなことからも、御社の掲げられる「すこやか」という言葉に親しみを感じます。

BTB2023_3.jpg森永製菓 髙木氏(以下 髙木):ありがとうございます。当社は1899年の創業以来、120年の歴史を経て菓子、冷菓、健康などの食品を提供してきた老舗企業です。現在は米国をはじめ海外に展開し、「2030年にウェルネスカンパニーへと生まれ変わる」ことをビジョンとして掲げています。

宮﨑:日本を代表する伝統企業で、かつグローバル企業としても、日本企業の抱える課題を共有されていると思います。1つめに伺いたいのは、近年、東証から出されたPBR改善要求への対応です。少し前までプライム市場での上場企業の約半数が、PBR(株価純資産倍率)が1倍割れという状況のため、資本市場から厳しい目で見られていました。日経平均の上昇にともなって、以前よりはPBRは上昇してきていますが、我々のお客様であるCFOの方々は、様々な取り組みでご苦労をされています。このような状況をどのように見られていますか。

髙木:そうですね。当社グループも、直近の2022年度のPBRは1倍を超えてはいますが(2023年3月末 約1.5倍)、ここ数年はROE(自己資本利益率)とともに低下傾向が続いているのも事実です。資本市場からはまだ十分な評価が得られていないと感じています。そのため、中期経営計画では企業価値の向上を目標の1つに据えています。必要なことは、まずは意識改革だと考えています。当社グループはPBRとROEの相関関係が比較的強く、今後市場における企業価値評価を高めていくためには、ROEの改善が重要なのです。

宮﨑:ROEの改善に向けては、どのような課題をお持ちでしょうか。

髙木:「資本収益性の改善」と「資本コストの最適化」を推進する必要があります。前者については、ROICマネジメントのもと、事業ポートフォリオの最適化、ROICツリー分析に基づく事業収益性の改善、投下資本の効率化などが課題です。後者については、財務安全性を確保した上で、最適資本構成に向けて財務レバレッジを活用し、資本コストの水準を調整しています。その上で、継続的かつ安定的な株主還元も重要なテーマです。今期が最終年度となる3ヶ年の中期経営計画の中で、株主還元の約2.5倍以上の実現を目指しています。

BTB2023_4.jpg宮﨑:なるほど。持続的な企業価値の向上という観点から、グローバルガバナンス強化の取り組みの具体的な内容についてはいかがでしょうか。

髙木:連結グループ全体を俯瞰した経営基盤の強化を重視しています。その中で経営者、特にCFOにとっては、標準化された経営情報を少ない工数で把握して分析できる体制を構築することが必須だと考えています。

現在は海外オペレーションにおいて決算期が統一されていない子会社も複数あるなど、グローバル標準として求められる会計決算や監査管理の体制について、まだ課題があります。そのため、全社プロジェクトで、経営状況の可視化、標準化、業務の省力化、自動化、あるいは統制の強化を推進しているところです。限定的な人材のリソースの中で、グローバルなガバナンスを実行するためには、デジタルへの取り組みが重要なテーマです。デジタル技術を最大限活用しながら、インフラや業務のプロセスをデジタル主体に順次展開していくことが必須になると考えています。特にブラックラインのソリューションは、当社のグループ全体の連結会計や決算監査業務において、可視化や標準化、業務の省力化、自動化などに貢献いただけるものと期待しています。

宮﨑:デジタルツールの必要性についてのご指摘ありがとうございます。組織や人材面での取り組みはいかがでしょうか。最近は本当に多くの財務経理の方々が、今の人材をいかに定着化させ、採用し、確保していくかという課題でお困りの方々が多いと感じてます。御社の中においての人材の確保や育成、活用面で工夫されてる点などございますでしょうか?

髙木:当社グループにおきましても、やはり人材の確保と育成は、重要な課題になっています。特にグローバルの経営展開を考えると、従来型のメンバーシップ型の雇用スタイルのみでは限界があるとの認識を持っています。

老舗企業として築いてきたブランド価値は従業員にも浸透しているため、従業員意識調査では「この会社の一員であることに誇りを持っている」との肯定意見が80%を超えており、非常に高いロイヤリティを示しています。こうした伝統や価値は大切に継承していきたいと考えています。しかし、その一方で「ウェルネスカンパニーへ生まれ変わる」というビジョン実現のためには、強さと柔軟性を備えた多様性の活力を活かせる組織づくりが必要です。

その上で、財務経理部門では公認会計士資格を持つ専門人材を、積極的に中途採用しており新卒の職種別採用も行っています。また、事業部門で現場の経験を持つ社員を経理財務部門に異動させるなどにより、多様なバックグラウンドを持つ社員で構成されています。

一方、「個」としての人材の育成、活用にあたっては、将来構想に基づく人材のアロケーションが大切と考えます。経営支援・事業支援の役割、高度専門業務の役割、実務の品質や生産性を高める役割など、それぞれの明確な戦略の方向性を示して、スキル開発と業務経験の機会・環境を提供することを通じて、最終的には社員が自律的なプロティアン・キャリアを達成することを目指しています。

宮﨑:大変素晴らしいアプローチですね。最後に、財務経理担当の方々へのアドバイスだったりメッセージをいただければと思います。

髙木:当社のような老舗企業でも、これまで築き上げられた伝統の価値に加えて、時代とともに変化するステークホルダーの皆様からの要請に応えるべく、「経営の進化」に挑戦しております。当社グループの「バリュー」は「利他の精神」を礎としています。ぜひ皆様と共に切磋琢磨することで、社会的価値の向上に貢献できればと思います。

宮﨑:貴重なお話をありがとうございました。

<講師>
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(右)森永製菓株式会社 取締役上席執行役員 最高財務責任者 髙木 哲也 氏
(左)ブラックライン株式会社 代表取締役社長 宮﨑 盛光

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