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ERP導入済みの経理部門がさらなる効率化を実現するには?

多くの企業が、経理業務の効率化や決算早期化を目的としてERPシステム(以下、ERP)を導入しています。しかし、思っていたほどには業務負荷が軽減されず、決算期間中は従来と変わらず長時間残業という経理部門は少なくないのではないでしょうか。
本ブログでは、そうしたERPを導入済みの経理部門が思っていたほどには効率化が進んでいない理由と、さらなる効率化を実現するためのポイントについて解説します。

ERPを導入しても、思っていたほどには経理業務の効率化が進まない理由
さらなる効率化を実現するためのポイント
 1)電子承認+自動承認
 2)ペーパーレスで電子化したデータはタスクと紐づけて保存する
 3)進捗の可視化と情報共有でコミュニケーションコストを削減
 4)業務ログを残す際も、ポイントは“情報の再利用性”
 5)経理が扱いやすいシステム

ERPを導入しても、思っていたほどには経理業務の効率化が進まない理由

ERPを導入しても経理部門の業務負荷が想定していたほどに軽減されない理由は、経理業務にはERPのデータ以外にも様々なデータや情報が必要であり、ERPの周りにたくさんの手作業やコミュニケーションが残っているからです。
決算業務を例に説明します。
正しい経営判断のために経理が作成する財務情報に間違いがあってはいけません。株主に対しては財務諸表が正しく作成されていることを担保するために、監査要点(アサーション)を満たすことが求められます。そのため、決算では勘定残高が正しいことを検証するために、会計データ以外に社内の他システムのデータやExcel等で管理しているデータ、取引先からの各種証憑や銀行口座の残高情報など、実に様々な情報を参照する必要があります。そして、勘定残高の正しさを確認したという事実と、正しいと判断した根拠(間違っていた場合は修正した内容とその根拠)を、監査等で参照できる形で記録する必要があります。そして、これら一連の業務処理の多くはERPの外で行われます)。

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ERPの特徴である「リアルタイム統合」のおかげで会計データの入手スピードと精度が大きく向上しました。また、ERPをグループ会社にも広く導入した企業では、グループの会計データの標準化が促進され、連結決算の早期化や連結経営情報の精度向上に一定の成果を上げることができました。

しかし、ERPは決算業務のようにERP外のデータを取り込んでの会計データの検証や、業務のログや関連文書、検証結果や調査の顛末を管理するような処理には向いていません。決算プロセスにおいては正規化された会計データを提供するところまでがERPの役割となります。

日本CFO協会が2021年に企業の経理財務部門を対象に実施したサーベイでも、こうしたERPの外で行われる業務や処理に対するデジタル化のニーズが高さを示す結果が出ています。

図2.png

ERPには精度の高く詳細な価値あるデータがたくさんありながら、こうしたERPの周辺にある“作業”に多くの工数をとられ、ERPのデータを十分に活かす余裕がないというのが、経理部門の実情です。

※関連文書:ERP/会計システムと何が違う?-BlackLineとの連携で加速する経理業務変革-      

さらなる効率化を実現するためのポイント

それでは、どうすればERPの周辺にある業務を効率化することができるか、以下に5つのポイントをご紹介します。

1)電子承認+自動承認

ワークフローのツールなどを導入して電子承認を取り入れることで、効率化で一定の成果を上げることはできます。しかし、それをさらに進めて自動承認を取り入れることで、さらなる効率化が実現できます。
決算での勘定残高の検証(以下、勘定照合)や、債権の入金消込などをシステムで行い、金額や日付などが完全に一致している場合はシステム上で自動承認し、システムが承認したというログを残すことで、人による承認行為は一致していないものだけに限定されます。銀行の振込手数料の差異や、前後数日程度の日付の差異などに一定の認容ルールを設けることで、自動承認の範囲を広げることも可能です。

2)ペーパーレスで電子化したデータはタスクと紐づけて保存する

ペーパーレスで文書管理やファイリングの工数やコストが削減されます。また、様々な業務処理を自動化する上でもペーパーレスは必須です。電子承認もペーパーレス無しに大きな成果を上げることはできません。
しかし、単にドキュメントを電子化し、共有のサーバーやストレージサービスに保管するだけでは、データの再利用という点では不十分です。以前、ペーパーレスを進めている経理部門の方のPCを見せてもらったところ、PCのデスクトップは、業務に必要なデータにアクセスしやすくするためのショートカットでいっぱいでした。これではドキュメントは電子化されても、業務がデジタル化されたとは言い難いです。
そこで、さらなる効率化のポイントの2つ目は、電子化したドキュメントやファイルを経理業務の各タスクと紐づけて保存することです。これにはタスク管理のツールが効果的です。例えば、決算の勘定照合では、

・どのデータと照合するのか
・そのデータがどこにあるか(タスクに添付もしくはリンク先を記入)
・照合する際のポイント
・過去の決算での照合結果

などをタスク管理ツールで一元管理することで、情報検索や前任者等への問い合わせ工数が削減され、ペーパーレスによる業務効率化の効果が一気に高まります。

※関連ブログ:経理・決算業務に特化したタスク管理システム

3)進捗の可視化と情報共有でコミュニケーションコストを削減

業務上のコミュニケーションで最も多く利用されているのが電子メールです。ビジネスチャットも特に複数メンバー間でのコミュニケーションに便利です。しかし、そもそもそうしたコミュニケーションにかかる時間を減らす方法があります。
ポイントは「可視化」と「情報共有」です。ここでも決算業務を例に説明します。決算業務にはたくさんのタスクがあり、それぞれのタスクには前後関係や親子関係があり、処理期限が設けられています。多くの場合、これらのタスクの進捗状況はExcelで管理されていますが、更新時のファイルロックなどもあってリアルタイムでの進捗管理が難しく、他のタスクの担当者や管理者とコミュニケーションをとりながら、担当するタスクを処理するケースが一般的です。さらに、タスクの担当者に変更があった場合には、前回の決算での手続きや処理結果について前任者に確認するなど、決算業務にはたくさんのコミュニケーションプロセスが存在します。

前述のタスク管理ツールはここでも大きな効果を発揮します。タスク管理ツールは、決算の進捗状況をリアルタイムに可視化し、決算の各タスクの手順や過去決算の顛末などの履歴情報などを一元管理することができます。また、監査人などの外部の関係者とのコミュニケーション機能や、閲覧範囲を限定した情報共有などで、監査対応を効率化することも可能です。

4)業務ログを残す際も、ポイントは“情報の再利用性”

経理業務でERPやワークフローツールを使用すると、システム上にログが残ります。こうしたシステム上の業務ログの情報は、内部統制観点での管理業務を効率化し、また、現行プロセスのボトルネックなど、業務改善を進める上での改善ポイントを提供してくれます。
しかし、ログ情報として記録される内容や再利用性にはシステムよって機能差があります。単に業務ログが残るだけでなく、業務プロセスの管理や業務改善への活用などの観点で、業務ログに必要な情報が記録されているか、再利用することが容易かということも、経理業務に関連するシステムを選択することが、さらなる業務効率化を進め、内部統制を強化する上でも重要です。

▼関連動画:照合処理における業務自動化や業務ログ管理による提供資料の有用性向上

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5)経理が扱いやすいシステム(操作性+変更管理)

経理業務を大幅に効率化するためにはシステムを導入し、経理プロセスをデジタル化することは避けられません。1~4ではシステムの機能に関連したポイントを紹介しましたが、最後にもうひとつ大事なポイントが「変更管理のしやさすさ」です。
操作性が重要なのは当然ですが、それに加えて、外部の専門家やIT部門に頼まなくても、経理部門のメンバーだけでも、ある程度のシステム変更ができるという点です。

売掛金の入金消込のシステム化を例に説明します。売掛金の入金消込をシステム化した際に、売掛金明細と入金データの整合率を高めるためには、金額、日付、注文番号(請求番号)などの項目に加えて、項目ごとに金額や日付の誤差の認容範囲や注文番号の類似性の判定など、様々なパラメータやルールを設ける必要があります。こうしたルールは、システム導入の初期段階から高確率で整合するような設定は難しく、通常は運用を進める中で整合率が高くなるようにルールを微調整する必要があります。システムの導入当初はそうした調整を外部の専門家の助けなしに行うことはできませんが、スピード面でもコスト面でも、経理部自身が調整できた方が良いのは明らかです。

また、経理部自身でシステムを更新できれば、業務プロセスを固定化させず、業務改善を進めて、改善のアイディアをすぐにシステムに反映させることも可能です。ERPは優れたシステムですが、高度に複雑であるため専門家以外では手を出すことが難しいという難点があります。ERPを長く使っている経理部門の方であれば、業務プロセスを改善するためのERPの設定変更や、新しくリリースされた機能の導入をIT部門に依頼しても「他の業務モジュールやアドオンプログラムに影響が出るかもしれないので、簡単には対応できない」あるいは「外部の専門家に依頼が必要なので時間もコストもかかる」と、なかなか話が進まない経験をお持ちの方もいるのではないでしょうか。

経理業務のオペレーションに密接にかかわるシステムは、経理部自身が(ある程度の)変更管理が可能な「経理部の、経理部による、経理部のためのシステム」であることが、効率化のための改善サイクルを回し続け、持続可能な経理業務を実現する上で、とても重要なのです。

<ライター>

yakata.jpgブラックライン株式会社
ファイナンシャルエキスパート
屋形 俊哉

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