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未デジタル化が招く決算業務遅延リスクとリモート決算の可能性

シリーズ「令和時代で変わる!経理部門のDX徹底理解」
「未デジタル化が招く決算業務遅延リスクとリモート決算の可能性」

新型コロナウィルス感染症対策のため、一部の業界業種を除き多くの企業がリモートワークを余儀なくされた。では、紙の資料や帳票類を多く扱い、オフラインでの作業が欠かせないとされてきた経理部門はこの事態にどう対処し、どのような影響が出ているのか。年度決算の時期も到来するなか、東京証券取引所では決算発表の遅延を容認する措置をとったが、そこに見えざるリスクはないのか。アナログな経理業務に潜むリスクについて警鐘を鳴らす短期連載企画の2回目。リモートワークでの決算業務推進を可能にする、クラウド型決算プラットフォームを提供するブラックライン株式会社日本法人代表取締役社長・古濱淑子より解説していく。

コロナウィルス感染症の影響で7割が「決算業務の遅延」を不安視

デジタル化が比較的進んでいる営業やマーケティング部門などに対し、経理部門がなぜデジタルトランスフォーメーション(DX)の波に取り残されがちなのか。前回の記事で、その実態、背景について触れました。

決算業務の中には、各種システムから数値データを1つ1つ抽出し、集計や計算するなどして、残高試算表との整合性を確認するといった手作業が多く残されています。あるいは決算の期日ギリギリになっての売上や費用の伝票入力などイレギュラーな業務も多くあります。
これだけDXの必要性が言われながらも、決算業務にはこうしたアナログな業務プロセスが欠かせないというのが長く業界の常識でした。そして決算時期ともなれば深夜残業や休日出勤を余儀なくされる、いわば現場の犠牲により何とか業務は回ってきたわけです。

しかし、新型コロナウィルス感染症対策のため、一部の業種業界を除き多くの企業がリモートワークへのシフトを余儀なくされました。日本CFO協会が今年2~3月に577名の経理財務部門に属するビジネスパーソンを中心に行なった緊急アンケートでは、「決算業務に影響は出そうか」に75%がYES。影響の内容については「具体的な対策が確立されていない」「決算業務の遅延」などが挙げられています。(アンケート結果をまとめたインフォグラフィックスはこちら)多くの企業が業務のデジタル化の遅れが経理財務部門の多くの方々の不安、業務遂行のハードルとなっている実情がわかりました。

リモートによって経理・決算業務が効率化したケースも

こうした実態を踏まえ、東京証券取引所では、2月の段階で上場企業の決算発表延期を容認。既に海外連結会社の監査遅延などを理由に決算発表延期した企業も多くありました。海外でのロックダウン措置による移動制限がかけられる中で実査が不能になるなど、決算発表の延期は制度上仕方ないと思われるかもしれません。

しかし、経営者の立場としては、未曽有の事態こそいち早く正しい意思決定をするための判断材料として、今の財務数値を把握したいという思いが強いのではないでしょうか。
危機管理上、経理財務部門は損失の状況把握や投資判断の参考にするための経営に資する数字を提供していくことが重要なミッションとなります。さらに恐らく多くの企業が厳しい経営の実態を突き付けられることが予測されるなか、投資家に対してもなるべく早く正確な数字、そのバックグラウンドを発表し、適切なコミュニケーションを取ることも肝心といえます。今回のコロナ騒動では業種業界、部門に限らず多くのビジネスパーソンが働き方、仕事・生活のスタイルの変容を迫られ、企業はそのための制度・インフラ整備に追われることとなりました。そのベースともいえるデジタル化にいち早く取り組んでいた企業と、そうではない企業とでは、さまざまな差が既に生まれつつあるのではないかと思うのです。

リモートで決算が効率的に実現する時代は到来するか

ここでポジティブな話として、当社クライアントの事例をご紹介させてください。同社では生産性向上を目的に以前より経理・決算業務のクラウド化を推進していました。コロナ騒動は想定外ではあったものの、業務を速やかにリモートにシフトしたと言います。さらに「個々のメンバーが自身の業務に集中し、月次決算も普段より業務時間の短縮が実現。コロナウィルスの行方如何に関わらず、期末決算もリモートで実践していく道筋が見えてきました」という力強いお声をいただきました。

無論、オンライン上だけで決算業務すべてを完了するのが実質的に無理な企業も多くあるのも実態です。ですが、長らく経理財務部門の現場を見てきて、せめて「決算時期の経理部門の長時間残業は仕方ない」という“悪しき習慣”をテクノロジーの力で変えられないか。そう常々願っている私としては、コロナウィルスによる甚大な被害の一方で、前向きな変化も期待したいと思うのです。

感染症対策だけでなく来年には延期となった東京五輪・パラリンピックが控え、自然災害などによる公共交通機関の混乱リスクへの対応も今後、必須となってきます。全社DXを推進するITリーダーの皆さんも、経理財務部門のトップを担うCFOの方々も目の前の事態収束に追われていることと思いますが、BCP対策(事業継続計画)を進める上でも、ポストコロナの時代をも見据え、いかに動くか。何に投資し、何を進めていくか。今こそ、ぜひ長期的視点でDXのあり方を考える好機にできればと考えています。

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