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富士通の財務経理部門変革の取組み

BlackLine Summit 2024レポート#2

2024年2月29日(木)、ブラックライン株式会社主催による「BlackLine Summit 2024」が東京ミッドタウンで開催されました。昨年に続いてのリアル開催となった会場には多くの企業の経営者、財務・会計の業務に関わる方々にお越しいただきました。

今回のテーマは「CFO組織の真価と進化」。世界経済の先行きの不透明感が一段と強まり、経営の羅針盤を担う経理部門への期待はますます大きくなる中で、CFOやCFO組織がカバーすべき領域もより戦略的な方向へと広がりを見せています。本イベントでは、いま求められるCFO組織の真価とは何か、真価を発揮するために“今”何をしなければいけないか、ゲストスピーカーの方々に様々なお話しを伺いました。

Fujitsu7.pngのサムネイル画像レポート第二弾は、富士通株式会社様(以下、富士通)のグループ/グローバルでの財務経理部門変革の取組みについての紹介です。富士通では、社会課題解決というパーパス実現に向け、グローバルレベルで事業を変革するために、データと業務プロセスのグローバル標準化を目指して"OneERP+プログラム"を推進しており、その過程で、財務経理領域ではBlackLineを国内グループ会社に段階的に導入しています。本講演では、BlackLine導入の背景となった財務経理部門に求められる組織と役割の変化、BlackLineの導入方針や効果などの実践事例が紹介されました。

BlackLine導入による業務効率化・自動化
-グループ/グローバル全体での財務経理部門変革に向けて-

One Fujitsu: 経営 × ビジネス × ITの変革 

富士通は1935年に通信機器メーカーとしてスタートし、現在では通信システム、情報処理システムおよび電子デバイスの製造・販売ならびにそれらに関するサービスをグローバルで提供している日本を代表する総合ITメーカーです。

2021 年10月に社会課題の解決への貢献と、富士通自身の持続的な成長の両立を目指す事業変革に着手し、その変革を成し遂げるために、IT、働き方、カルチャー、人事制度、戦略・投資の5つの領域で大胆な変革プログロムを推進しています。

ジョブ型人事制度の導入やロケーションフリーの事業拠点の在り方などはその一例ですが、それら一連の変革プログラムの中で、グローバル全体での組織横断で推進中の最も大掛かりな取組みがOne Fujitsuです。One Fujitsuにはデータドリブン経営の実現とオペレーショナルエクセレンスの追求という2つの目的があり、その実現に向けて、

  • 合理的・迅速な意思決定を支えるリアルタイムマネジメント
  • 経営資源のend to endでのデータ化・可視化
  • グローバルでのビジネスオペレーションの標準化


の3つの重点施策を掲げて取り組んでいます。

この変革プログラムでは、各業務領域で制度、システム、データをグローバルかつグループ会社横断で統合するという非常にチャレンジングなプロジェクトで、単なるITプロジェクトではなく、経営から現場まで大きな変革を推進する経営プロジェクトとして経営トップから発信されています。

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One ERP+(プラス)の目指す姿

One ERP+はOne Fujitsuを実現する上で中核となる業務基盤の構築プロジェクトですが、前掲の図にあるようにERP以外にも”One”を冠したプロジェクトが多数進められており、ここには全ての領域においてグローバルでひとつになって取り組む“真のGlobe One” という思いが込められています。

これまで富士通ではグループの各社、各業務が個別にシステムが導入した結果、グループ全体で4,000超のシステムが存在し、この個別最適で肥大化したシステム群をシンプルにして、グローバルレベルでデータと業務プロセスを標準化することで経営と現場をつなぐオペレーション体制を構築し、データドリブン経営に資するリアルタイムでのデータの把握と、オペレーションの品質・スピード・効率の向上による高付加価値業務へのリソースシフトを実現することがOne ERP+の目指す姿です。

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そして、ITシンプル化を進める上で重要なのが、以下の3つの原理原則です。

  1. 経営・業務 = 1業務1システム
  2. アプリケーション = 1システム1インスタンス
  3. ITインフラ = クラウドファースト(Fit to Standard)


この原理原則に則って、他者の先進事例やグループ内での先行事例を参照しながら業務プロセスの標準モデルを作成し、現場に展開する際にはチェンジマネジメントの重要性を痛感しながらプロジェクトを進めています。

財務経理部門の取組み

One Fujitsuの取組を財務経理部門として推進する上で、One Fujitsuの2つの目的(データドリブン経営の実現とオペレーショナルエクセレンスの追求)連携する形で財務経理部門のビジョンとミッションをまとめています。そして、成果の最大化を図るために、ガバナンス、運用、人材、カルチャーの4つの指針を定めて、グローバル一体でのオペレーティングモデルの構築に向けてプロジェクトを推進しています。

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また、グローバル一体でのオペレーションモデルの構築に際して、組織の機能強化や再構築にも取り組んでおり、従来のリージョン単位・会社単位に配置していた財務経理組織を、CoE/ガバナンス、オペレーション(SSC)、FP&A の3つの機能に分類し、最終的にはグローバルで集約することで、グループ全体で最適化されたオペレーティングモデルと機能配置の実現を目指しています。

オペレーション組織変革
-国内財務経理部門体制の見直しとBlackLineの導入-

One Fujitsuが始める以前から国内では財務会計機能の集約を進めており、まずは国内各社の財務会計の機能(人)をシェアードサービス会社(富士通アドバンス・アカウンティングサービス株式会社)に集約し、その後、標準化・効率化を実施する形でプロジェクトが進められ、現在約50社のグループ会社の財務会計業務が集約されました。

しかし、集約はしたものの各社の決算プロセスはばらばらで手作業も多く、進捗状況も見えず、また、業務手順やスケジュールの文書化も不十分で、集約後の業務標準化やシェアードサービス会社としてのリソース調整もなかなか進まない状況でした。

このブラックボックス化された各社の業務プロセスを可視化し、標準化と自動化を推進するための新たな業務基盤としてBlackLineの導入が検討されました。

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検討に際しては他社事例やPoC(例.売掛金の入金消込の整合率検証)でBlackLineを評価し、最終的には「1業務1システム」「1システム、1インスタンス」「 クラウドファースト(Fit to Standard)」のITシンプル化の原理原則に即し、グローバル一体でのオペレーションモデルを構築する上でBlackLineが有効であると判断しました。

BlackLineの導入はOne ERP+に先行する形で進められましたが、これにはOne ERP+という長く壮大なプロジェクトを進める中で、自動化・効率化の効果を先取りと、事前にBlackLineの運用することでグローバル標準への移行をスムーズに実現するといった狙いがありました。

また、プロジェクトの着実な実行と早い段階での効果創出を狙いに、対象会社と対象モジュール、適用する業務領域を限定したスモールスタートでプロジェクトは開始し、その後段階的に拡張されています。

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とはいえ、現場の個々人からすれば属人化した業務は慣れ親しんだ効率化されたオペレーションであり、なぜこんな管理作業が必要なのかという反発の声や仕事の進め方が変わることへの抵抗もありましたが、グループとして「業務プロセスを会社単位から業務単位へ変更する」ことの強い意思表示と、導入サポートの専任チームを立ち上げて啓蒙活動を実施するなど、推進体制を強化することで対処しました。

BlackLine導入の効果

BlackLineが導入された結果、決算業務の整流化とタスクの可視化が実現され、チームとして複数会社横断での業務執行も可能となりました。また、業務に関連する帳票や証憑、マニュアル等の一元管理によってノウハウが共有され、統制強化も実現されました。その他、領域ごとの導入効果の一例として以下のようなものがあげられます。

スケジュール管理・タスク管理
・各社の業務進捗が一覧で見える
・経理内での進捗問合せ対応や報告の解消
・書類保管は電子保管に
・監査はメール等のやりとりからBlackLineを参照に変更

仕訳入力
・承認依頼は関連ファイルをBlackLineに添付しWFで実行
・前受金等の定型仕訳の自動化 

明細照合
・Excel売掛金台帳をBlackLineにアップロードして自動照合
・前受金取り崩しの自動化
・照合結果から売掛金の消込仕訳の自動起票

勘定照合
・BlackLineで残高不一致の勘定科目だけ表示することで差異発生時の調査業務を迅速化

まだ100%満足には至ってはいませんが、現場からは「会社ごと」ではなく「業務単位」で改善の声があがるようになり、オペレーションモデル移行のたしかな足掛かりになっています。また、BlackLine導入以外の改善取組みと併せて20%の業務効率化を実現しており、DXスキルの習得やOneERP+等の改革プロジェクトのサポートなどに時間を充てられるようになっています。

最後に

講演の最後にはプロジェクトの開始当時に描いた「財務経理部門としてありたい姿」が紹介されました。
この絵の中で財務経理は経営者(ドライバー)の横に座って進むべき方向を示し、オペレーショナルエクセレンスで富士通という自動車をチューンナップしており、オペレーショナルエクセレンスを追求する中で“私らしい働き方”を実現し、データドリブン経営では高付加価値業務へのシフトと組織機能の強化によって未来予測型経営の実現に財務経理として深くと関わっていけるようにしたいという思いが込められています。

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出井様、内容の濃い貴重な話の数々、ありがとうございました。今後とも、財務経理部門のビジョン・ミッション実現に向けて伴走させていただきますので、引き続きよろしくお願いいたします。

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